脳神経外科Neurosurgery

脳神経外科

診療内容・特徴

東京臨海病院脳神経外科は、2019年4月より新たな体制を整えつつ、最新の診断や治療機器を駆使して、患者さんにとって質の高いより良い医療サービスを提供できるように努めております。また、総合病院という特徴を活かして、各診療科や各職種スタッフとの連携を密に取りながら全人的医療に努めております。脳神経外科病棟においては、専門看護師や専門リハビリテーションスタッフらと協力して、患者さんやそのご家族の方々に笑顔が戻るような診療に努めております。

診療内容は、脳神経外科疾患全般に渡る内科的または外科的治療が主となります。とくに、脳血管障害、脳腫瘍、脳脊髄外傷、機能的疾患(三叉神経痛、顔面けいれん、難治性神経障害性疼痛など)、そして小児神経外科疾患などを取り扱っております。脳血管障害における脳卒中急性期治療については、2022年4月より新たな脳卒中センター体制下での対応となっております。また、脊椎脊髄疾患については、脊椎脊髄・人工関節センターのスタッフとの協力の下、医療の質の高い診療を提供できるように努めております。

当院は、急性期治療を中心にした総合病院という使命のもとで診療に当たっております。ただ、脳卒中後遺症(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などによる後遺症)、脳脊髄外傷後後遺症(脳挫傷、脊椎脊髄損傷後などの後遺症)などの治療後で、すぐに自宅に退院できない状況が想定される場合には、医療福祉相談を担当する専門スタッフを通じて、自宅退院準備を視野に入れつつ、回復期リハビリテーション病院または療養型病院や施設など、ご家族にとってよりよい解決方法を模索できる形での転院について進めて参ります。

当科では、専門的な物忘れ外来や頭痛外来など特殊な診療形態での枠組みは設けておりませんが、当院脳神経内科専門医との連携を取りながら、「治療可能な認知症(treatable dementia)(特発性正常圧水頭症など)」や「手術で改善できる頭痛(慢性硬膜下血腫など)」の早期発見に努め、手術適応について適宜迅速に判断しております。また、たとえ手術の適応のない疾患におきましても、内科的な加療や介護認定など、可能な限り患者さんやご家族の支えになれますよう努めて参ります。

当科では地域の皆様にも貢献できるように心がけ、かかりつけの患者さんの場合、急な全身疾患(例えば、肺炎などの体調不良など)はもとより、遠方での御加療後の転院のご希望、あるいは赤ちゃんや幼小児などの子どもさんのけがについても可能な限り対応して行きたいと考えております。

診療受付、専門外来

脳神経外科診療については、外来スケジュールにて各担当医をご確認ください。

主に、月曜日午後、火曜日終日、水曜日午前などが手術予定日になっておりますので、緊急な救急要請には対応できない場合がありますのでご了承ください。その場合にも、当日救急外来をご案内し対応させて頂くよう心がけております。

外来診療の時間外につきましても、可能な限り対応を検討させて頂きますが、ご要望にお応えできない場合もありますので、事前にご連絡を頂きますようお願い申し上げます。

土曜日午前診療について:
2018年(平成30年)9月より、病院開院日の第2・4土曜日にて通常診療を開始しております。脳神経外科診療全般を担当しておりますのでご承知おきください。

診療対象疾患

脳血管障害

くも膜下出血
主に脳動脈瘤の破裂により発症し、迅速な手術的加療が重要になります。意識レベルや全身状態の重症度によっては、緊急で手術後治療が行えない可能性もあります。急性期は、集中治療室(ICU)で厳重な管理が必要となります。
手術には、開頭手術でのクリッピング術または脳血管内治療でのコイル塞栓術のどちらかの治療を選択することになります。
治療の選択について、原因疾患の状況を専門医により十分に検討した上で、開頭または脳血管内のどちらが患者さんにとって安全で最善の方策かを決定し、治療方法を提案致します。その後、ご家族の十分なご理解とご同意を得た上で治療となります。
脳出血・脳室内出血
手術的治療には、救命を目的にした手術と機能回復を目的にした手術があります。救命を目的にした手術は、緊急にて主に開頭で行わることが多いです。
一方、機能回復を期待した手術では、神経内視鏡を用いた小開頭または穿頭にて、脳組織の損傷を低減することを目的にした低侵襲手術(less invasive surgery)にて脳内血腫または脳室内血腫の摘出を行います。また、定位的手術での脳内血腫除去術も行っています。いずれの場合にも、リハビリテーション加療にシームレスに移行し、機能回復の改善、向上に努めております。
脳梗塞
2022年4月より当院では脳卒中センター化に伴い、もっとも治療成績の向上に期待できる疾患です。
脳梗塞急性期の場合、神経症状の重症度、発症時刻、そして閉塞血管部位により、時間経過によって治療内容の検討が必要になります。
治療は、主にt-PA血栓溶解療法、経皮的血栓回収療法、保存的療法になります。発症4.5時間以内の場合、神経症状の重症度など、その他全身疾患との関係もありますが、原則t-PA血栓溶解療法を点滴静注にて行います。その後、経皮的血栓回収療法を検討し、可能な限り血栓回収に努めるようにしています。発症時刻は不明ではあるが、画像診断を考慮した上で経皮的血栓回収療法に移行する場合もあります。画像診断にて、t-PA血栓溶解療法も経皮的血栓回収療法も明らかに困難な症例の場合には、保存的加療を中心に行い、救命処置が必要な場合には開頭での減圧療法も検討されます。
これら一連の治療経過については、救急科、脳神経外科、脳神経内科とのチーム医療体制で構築された脳卒中センター下での診療となります。
その後のリハビリテーション加療についても積極的に行っています。脳卒中患者さんへのリハビリテーションは、専門リハビリテーション訓練士(運動療法士、作業療法士、言語療法士)による介入を全身状態の安定を見定めて速やかに行って参ります。
頸動脈狭窄症
脳梗塞の原因になる頸動脈狭窄症については、頸動脈内膜剝離術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)のどちらかの手術を選択します。年齢、病変の部位やプラーク性状を検討した上で、患者さんにとって最善と考えられる治療をご提案致します。
頭蓋内血管の狭窄または閉塞
脳梗塞の再発を予防する目的で、最善の内科的加療(best medical treatment)を行っていても進行性に脳卒中が危惧される場合には、頭蓋内血管について血行再建術(頭蓋内外血管吻合術)をご提案することがあります。
心臓疾患、糖尿病などの全身性合併症が存在する場合には、各内科専門医へのコンサルテーションを行い、全身状態の改善を図りながらより良い医療の提供を心がけます。
もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
本疾患は日本人に多く、難病の指定疾患にもなっています。発症時期により小児型と成人型にも分けられ、その発症形式にも違いがあります。小児期での発症の多くは脳虚血症状であり、運動時の脱力発作や高次脳機能低下が問題になります。また、成人期での発症は、脳虚血と脳出血での発症がほぼ半数ずつと言われ、出血発症の場合には時に重篤な意識障害や運動麻痺を伴うことがあります。小児期、成人期の発症形式の違いを十分に考慮した上で、手術加療(直接血行再建術または間接血行再建術、あるいはその両者)を行うようにしています。
脳卒中の予防
脳CT、MRI検査で認めた無症候性脳梗塞については、全身内科的疾患(心臓疾患、高血圧症、高脂血症、糖尿病など)、嗜好品(お酒、たばこ)、あるいは家族歴などを総合的に判断した上で、内科的加療をお勧めするようにしています。
脳卒中後の痙縮について
脳卒中後の痙縮により、日常生活動作(ADL)の低下があり、痙縮の改善によりADLの改善が期待できる場合には、ボトックス治療を行うこともあります。
脳ドック
脳ドックの有用性について、とくに未破裂脳動脈瘤の治療が検討されます。
日本人による未破裂脳動脈瘤の破裂する危険性については、すでに報告されております。当科では脳動脈瘤のサイズ、形状、部位などを総合的に判断し、手術をご提案しています。手術内容について、開頭手術または脳血管内手術のどちらが最善かを十分に検討した上で、ご本人とご家族を交えて十分な説明を時間的な差異を設けて行います。手術の必要性や有用性、合併症、後遺症などに関して、ご本人とご家族に十分に考える時間を持って頂いた上で手術に同意されるかどうかの意思決定をして頂くよう心掛けています。また、ご希望のある場合には、積極的にセカンドオピニオンを推奨しておりますので、忌憚なくお申し付けください。

頭部外傷(脳脊髄外傷)

緊急の場合には救急科と連携し、また全身性外傷時には一般外科や整形外科、その他の科とも相談し診療にあたっております。

とくに頭部外傷での急性硬膜下血腫や急性硬膜外血腫の場合により切迫した脳へリニア徴候を認めた場合には、緊急での開頭手術を行っています。また、生命には危険性の未だ及んでいない慢性硬膜下血腫の場合でも、意識レベルやその他の神経所見の悪化を認めた場合には、臨時で手術を行うようにしています。

飲酒後の転倒などによる頭部外傷では、正確な意識レベルの評価が困難な場合が多く、付き添いをお願いして経過観察を目的にした入院をお勧めすることがあります。

小児の頭部外傷については、放射線被ばくを極力避ける意味でCT検査などは基本的に行わない方針を取っています。ただし、一定の診断基準に基づいて、例えば、頭部外傷後3回以上の嘔吐、けいれん発作(ひきつけ)、顔色不良など機嫌がいつもより悪い場合など、そして頭部外傷部位に比較的大きな血腫を伴っていたり、創部離開を伴い縫合処置が必要であった場合など、保護者の方にご許可を頂きCT検査を行っております。検査にて特に異常がなかった場合にでも、こどもの機嫌がすぐれなかったり、経過観察が必要と判断した場合にはご入院をお勧めしています。

頭部外傷の既往が不明な場合のなかに、認知症状の悪化、頭重感の出現や増大、歩行困難などの運動機能の低下(脳梗塞症状と類似)などにて脳CT検査などで慢性硬膜下血腫が見つかることがあります。慢性硬膜下血腫は、「治療可能な認知症(treatable dementia)」と認識されており、局所麻酔下での穿頭手術で症状の改善が期待できます。積極的な手術が必要な疾患と言えます。

機能性疾患

顔面けいれんや三叉神経痛のなかには、手術的加療にて症状の改善が期待できる場合があります。

脳MRI検査などにて脳腫瘍や嚢胞性病変がなく、顔面神経や三叉神経を微小血管が圧迫していることが原因になっている場合があります。この場合、責任となる微小血管を神経から離す減圧術を行うことで症状の改善が期待できます。手術治療についてご理解を頂ければ手術を行うことを検討します。その他、顔面けいれんではボトックス治療で数か月間の症状軽減を期待できる場合もあります。また三叉神経痛では内服(テグレトールなど)での症状緩和も期待できます。難治性神経障害性疼痛の場合には、内科的な加療が抵抗性の場合に脊髄刺激療法(spinal cord stimulation,SCS)で症状緩和が期待できる場合がありますので、ご相談を頂ければ幸いです。

脳腫瘍

  • 良性または悪性神経膠腫
  • 髄膜種
  • 聴神経腫瘍
  • 下垂体腺腫
  • 転移性脳腫瘍   など
良性または悪性神経膠腫
最新の機器であるナビゲーションシステム、MR トラクトグラフィー、術中運動・体性感覚誘発電位(MEP・SEP)モニタリング、超音波装置などを駆使しながら神経機能温存に努めて手術的加療を積極的に行っております。
術後は、残存腫瘍について放射線治療科との相談の上、放射線療法を追加しています。また化学療法についても入院または外来での加療を行っています。
下垂体腺腫
下垂体腺腫については、手術適応を十分に検討したうえで、経蝶形骨洞アプローチによる腫瘍摘出術を行っています。手術用顕微鏡下または内視鏡下での手術を検討します。
転移性脳腫瘍
手術の適応を慎重に吟味し、「よりよい生活が自宅にて少しでも長く行える」治療をモットーに治療計画を行っています。
少しでも早くベッド上の生活から抜け出したい、手術後のリハビリテーションを適切に行えば自宅退院も早期に可能となり、生活の質の向上が短期間でも期待できる、そのように考えられる場合には、十分なご説明を行い、治療に賛同を頂ければ、他の医療施設では困難と言われた治療内容であっても積極的に検討し、ただ一人のオーダーメイドな治療を施す準備を致します。治療の主役である患者さんにより沿った協同医療を主眼に置いた治療の用意は当科にはあります。
まずはご相談頂ければ幸いです。
補助療法について
当院では主に放射線治療科が中心になって全脳照射による放射線療法を軸に検討しています。ただし、患者さんによっては局所照射療法のみを検討する場合もあります。また、放射線治療の進歩により定位的放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフなど)の効果が期待できる疾患もあります。その場合には専門施設へのご紹介をさせて頂きますのでご安心ください。

診療実績

令和4年度 外来/入院統計

年間手術数

※横スクロールができます。
  平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年
手術総件数 164 176 174 144 153
脳腫瘍摘出手術 28 29 33 24 34
脳動脈瘤クリッピング術 11 7 7 5 3
脳内血腫除去術 12 7 12 5 9
直接血行再建術 6 5 2    
間接血行再建術       1 3
血管内手術 5 5 22 15 25
急性硬膜外血腫、硬膜下血腫手術 4 2 3 3 3
慢性硬膜下血腫手術 33 38 24 27 26
脳室腹腔短絡術 31 40 29 31 25
脊髄、脊椎手術 9 13 12 10 7

スタッフ紹介

神田大

副院長(脳神経外科部長兼任)

神田かんだ  まさる
出身医局 自治医科大学脳神経外科
資格 日本脳神経外科学会専門医
日本医師会認定産業医
医学博士
専門・研究分野 研究:クモ膜下出血急性期のサイトカインの変動について
臨床:脳卒中(特に出血)の診断、外科治療

  

医長

藤井ふじい   本晴もとはる
略歴 米国 Northwestern 大学脳神経外科 Chicago Children'Memorial Hospital 留学
高知医科大学医学脳神経外科助手(外来医長)
京都きづ川病院脳卒中・神経疾患センター脳神経外科医長
東京慈恵会医科大学脳神経外科助手・総合母子健康医療センター小児脳神経外科
国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科 准教授
聖路加国際病院脳神経外科医長(神経血管内治療科兼務)
花と森の東京病院 脳神経外科医長
資格 日本脳神経外科認定専門医・指導医・評議員
日本脳卒中学会専門医・指導医・評議員
日本脳神経血管内治療学会専門医
日本小児神経外科学会認定医・評議員
日本脊髄外科学会認定医・脊椎脊髄外科専門医
日本脳神経外傷学会認定指導医
日本リハビリテーション医学会認定臨床医
日本神経内視鏡学会技術認定医
日本定位・機能神経外科学会 機能的定位脳手術技術認定医
日本脳神経超音波学会 認定脳神経超音波検査士
脳神経外科救急基礎(PNLS)インストラクター・脳神経蘇生研修指導者
米国脳神経外科学会 International Fellow of AANS(IFAANS)
厚生労働省医政局長 指導医講習会修了
厚生労働省健康局長 医師緩和ケア研修会修了
日本医師会認定産業医・健康スポーツ医
看護師特定行為研修指導者
日本認知症予防学会専門医
医学博士
専門・研究分野 脳神経外科一般、小児脳神経外科、脳血管内治療、脊髄外科 など

医員(非常勤

村上むらかみ   成之しげゆき
出身医局
専門・研究分野 脳神経外科一般

教育活動・学会活動・研究業績

東部脳神経外科フォーラム(年2回)、脳神経外科学会総会、関東地方会、脳神経外科コングレス といった、学会に参加しております。

医療機関の皆さまへ

当院は、とくに、下記の病院と連携をとり、患者さんの受け入れを迅速に行っております。また、当院かかりつけはもとより、依頼については、極力お受けする体制を取っております。

お問い合わせは直接病院でも、地域連携室でも、結構です。

  • 癌研究会有明病院
  • 江東病院
  • むらかみ脳神経クリニック

外来診療スケジュール表

※日によって初診の方を当日診察できない場合がありますので、事前に電話でお問い合わせください。

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午前 神田 大   村上 成之 神田 大 神田 大 藤井 本晴
(2・4週)
午後 藤井 本晴   藤井 本晴 新田 英昭 神田 大