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第11回 糖尿病の災害対策(糖尿病看護認定看護師 田中 聡美)

  

地震や大雨等の災害時、場合によっては自宅で生活ができなくなったり、いつも通っている医療機関に通院できなくなったりすることがあります。しかし、このような大変な状況においても糖尿病患者さんは食事や内服、注射を続けていく必要があります。
災害前と災害後どのように行動すれば良いのかまとめてみました。

1. 災害に備える

1)日用品以外に災害時に持ち出す物を1カ所にまとめておきましょう

  • インスリン自己注射のセット(インスリン注射、針、消毒用アルコール綿など)
  • 飲み薬
  • 健康保険証(コピーでも可)
  • 血糖自己測定器(センサー、穿刺用ペン、血糖測定用針、消毒用アルコール綿など)
  • ブドウ糖
  • お薬手帳(コピーやお薬の説明書の写真でも可)
  • 水分と軽食

2)ご自分の基本情報をまとめておきましょう

糖尿病連携手帳等に記載したり、スマートフォン等に保存しておきましょう。

  • 使用中のインスリンの名前(2種類使用している人は2種類のインスリンの名前)
  • インスリン注射のタイミングと単位数(どのインスリンをいつ、何単位打っているか)
  • 通院中の医療機関と主治医の名前
  • 緊急連絡先
  • 緊急避難場所 2カ所以上

3)災害時、食事がとれないときのインスリン注射、飲み薬の使用法法を主治医の先生や薬剤師などに確認しておきましょう

2. 災害時の心得

  • その1:食事と水分はしっかりとりましょう
  • その2:飲み薬やインスリン注射は状況に応じて調整しましょう
  • その3:できるだけ身体を動かし、同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう
  • その4:手洗い、歯みがき、うがいをして細菌・ウイルスによる感染症を防ぎましょう
  • その5:けがをしたら傷を放置せず、きちんと手当てをしましょう
  • その6:発熱・嘔吐・下痢・脱水などの症状が出たら、すぐに病院に行くか、避難所で避難している場合は、救護所や医療スタッフに症状を伝えましょう。

3. 災害時の食事

エネルギーの確保が最優先です。食事はしっかり食べましょう。脱水を予防するためにしっかり水分(水、お茶)を摂取しましょう。
災害直後手に入りやすい食事は炭水化物を多く含む食品です。

◆ポイント1:食事の目安量 500キロカリーを目安に手に入りやすい食品を組み合わせましょう

おにぎり2個(400キロカロリー) +  牛乳200mL(120キロカロリー)

カップ麺(400~500キロカロリー)+ お茶(0キロカロリー) + みかん1個(40キロカロリー)

あんぱん(300キロカロリー) + バナナ1本(80キロカロリー) + オレンジジュース(200キロカロリー)

◆ポイント2:しばらくすると避難所では救援物資がたくさん届きます

次にいつ食事が届くのかが不安になってしまい、ついつい食べすぎになってしまい、動かないのでだんだん太ってしまいます。なるべく、野菜やタンパク質などバランスをとって食べるようにしましょう。
ゆっくり食べるように心がけ、食後はなるべく身体を動かしましょう。場合によっては、残すことも必要です。

4. 避難所での運動

糖尿病患者さんは、エコノミークラス症候群に注意が必要です。
避難所では、あまり動かずに活動量が低下するだけでなく、トイレ事情がよくないため、水分摂取を控えることが多くなるため、エコノミークラス症候群の危険性が高くなります。こまめに体を動かし、エコノミークラス症候群を予防しましょう。

① 足首の曲げ伸ばし
つま先を手前に向けたり、倒したりをゆっくり左右5回ずつ繰り返す。

    
    

② 膝の抱え込み
膝を両手で抱え込み、太ももの前面を旨に近づけるように膝を引く。
1回10秒ほどで左右3回ずつ。

    
    

③ 全身を伸ばす
背伸びをするように5秒間手足を大きく伸ばし、脱力。3回くり返す。

    
    

(参考文献:公共社団法人 日本糖尿病協会 糖尿病連携手帳挟み込み型 防災リーフレット/公共社団法人 日本糖尿病協会 災害時ハンドブック