呼吸器外科Thoracic Surgery

呼吸器外科

診療科紹介

当院の呼吸器外科は、平成24年2月に発足した診療科で呼吸器内科の一部門として開設されました。平成29年4月より常勤医師が不在となり、外来診療のみの体制となっていましたが、平成31年1月より常勤医師1名が着任し、手術を行ってきました。そして令和4年4月よりこれまでの体制を一新し、新たに3名の常勤医師が着任し初めて独立した診療科となりました。3名とも大学病院所属の医師で、2名は東京医科大学病院の呼吸器外科医局から、1名は日本医科大学付属病院の呼吸器外科医局からそれぞれ派遣されています。

スタッフの拡充に伴い、胸腔鏡を使用した完全鏡視下の手術(VATS: Video Assisted Thoracic Surgery) を安全に行えるようになり、拡大手術を除くほぼ全ての症例でVATSを行っています。当院で行われていた従来の開胸手術と比較すると術後疼痛の軽減や入院期間の短縮、術後のQOL(Quality of Life)を向上させ得ると考えられます。また、VATSの導入に伴い手術中に術者以外の手術室スタッフとも詳細な手術画像を共有できるようになったことでより安全で質の高い手術が可能になりました。

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図1 ICGを利用した区域切除術
最新の技術導入にも積極的に取り組んでいます。呼吸器外科の領域では高齢者の増加や画像技術の進歩に伴う小型肺癌の増加により、これまで標準術式であった肺葉切除(癌のある肺葉全てを切除する術式)が見直され、縮小手術(癌のある肺葉の一部を温存する術式)が注目されています。特に区域切除(癌のある区域のみを切除する術式)は今の呼吸器外科手術のトピックです。肺癌診療ガイドライン上も末梢小型肺癌に対して区域切除が選択肢の1つとして掲載されました。当院でも様々な症例に対して積極的に区域切除を行っていますが、今後、さらに区域切除の対象となる症例が増加していくと考えられ、多様化する術式に対応する必要があります。そのため、複雑な区域切除術の精度向上を目的としたICG(インドシアニングリーン)蛍光イメージングを用いた区域切除術(図1)を導入致しました。術中にインドシアニングリーンという蛍光を発する物質を静脈内に注射し、特殊な胸腔鏡で観察することにより肺癌の存在する区域を鮮明に描出する方法で、より安全で確実な区域切除を可能にすると考えられます。

また、これまで主流であった3-4ヶ所の傷で行う手術の多孔式VATSよりも、さらに低侵襲な術式である1つの傷で行う術式の単孔式VATS(uniportal VATS)(図2)を導入致しました。傷はより小さくなり、整容面で優れていることのみならず、術後患者さんを悩ませる肋間神経痛を軽減できると考えられます。今後も最先端の技術は積極的に取り入れていく方針であり、大学病院と遜色のない質の高い手術の提供を目指しています。

呼吸器外科で扱う主な疾患は肺癌を代表とする肺悪性腫瘍や肺良性腫瘍、気胸・肺嚢胞、また胸腺腫や胸腺癌などの縦隔腫瘍です。一般的な呼吸器外科ではこれらの疾患に対する手術治療が主な役割ですが、当科は気管支鏡診断および治療も積極的に取り組んでいます。ガイドシース併用気管支内超音波断層法(EBUS-GS)や超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)を令和4年4月より新たに導入し、呼吸器内科と協力し気管支鏡診断の向上に取り組んでいます。また手術困難な難治性気胸に対する気管支鏡下治療としてEWS(Endobronchial Watanabe Spigot)を用いた気管支充填術、また高齢者に多い義歯などの気管支異物の摘出なども行っています。

当院の呼吸器外科と呼吸器内科は非常に良好な関係であり、「呼吸器科」としてチーム医療を実践し、情報を共有することによって診断から治療に至るまでエビデンスに基づいた最適な医療を提供しています。その結果、2022年度の手術は当院呼吸器外科発足以来、過去最高の件数を記録し(171件)、また全例呼吸器内科と合同で行っている気管支鏡検査も過去最高の件数となりました(178件)。院内の各科の先生方や地域の先生方と積極的に連携をとるようにしており、年々増えている紹介患者は今後も肺癌症例を中心にさらに増加していくと思われます。江戸川区で本格的に呼吸器外科手術を行っているのは当院しかありません。その責任を自覚しながら安全・安心な医療を提供し、地域の中核病院としての役割を果たしていきたいと考えています。

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図2 術式による創部の違い

主な対象疾患

当科で扱う主な疾患は以下の通りとなります。

呼吸器腫瘍性疾患

  • 肺悪性腫瘍:肺癌、転移性肺腫瘍など
  • 肺良性腫瘍:過誤腫、奇形腫、硬化性肺胞上皮腫など
  • 胸膜腫瘍:悪性胸膜中皮腫など

縦隔疾患

  • 縦隔悪性腫瘍:胸腺腫、胸腺癌など
  • 縦隔良性腫瘍:神経鞘腫、のう胞性疾患など

手術適応のある呼吸器疾患

  • 気胸、巨大肺嚢胞、膿胸、感染性肺嚢胞、胸部外傷など

診療実績

令和4年度 外来/入院統計

延べ入院患者数

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外来患者数

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年度別手術件数

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※横スクロールができます。

■年度別手術件数(詳細)

2018 2019 2020 2021 2022
胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの) 0 14 17 2 32
胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(区域切除) 0 1 3 0 15
胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(部分切除) 0 2 0 0 17
肺悪性腫瘍手術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの) 0 3 1 0 2
胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術 0 0 0 0 5
縦隔悪性腫瘍手術(単純摘出) 0 0 0 0 1
胸腔鏡下肺切除術(肺葉切除又は1肺葉を超えるもの) 0 0 1 0 2
胸腔鏡下肺切除術(部分切除) 0 1 1 0 10
胸腔鏡下肺切除術(肺嚢胞手術(楔状部分切除によるもの) 4 16 11 0 47
胸腔鏡下肺縫縮術 1 0 2 0 6
胸腔鏡下胸膜胼胝切除術/醸膿胸膜切除術 0 2 0 0 4
胸腔鏡下試験切除術 1 2 6 1 10
胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術 0 0 0 0 8
縦隔腫瘍摘出術 0 0 0 0 1
胸腺摘出術 0 0 1 0 0
胸郭形成手術(膿胸手術)(胸膜胼胝切除を併施) 0 0 0 0 1
気管支異物除去術(直達鏡による) 0 0 0 0 1
気管支瘻孔閉鎖術 0 0 0 0 5
その他 0 0 2 2 4
総計 6 41 45 5 171

スタッフ紹介

牧野洋二郎

部長

牧野まきの   洋二郎ようじろう
出身医局 東京医科大学 呼吸器・甲状腺外科
資格 日本外科学会認定外科専門医
日本呼吸器外科学会認定呼吸器外科専門医
日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医
医学博士
専門・研究分野 呼吸器外科学
気管支鏡診断・治療
胸腔鏡下手術

医員

山道やまみち  たかし
出身医局 東京医科大学 呼吸器・甲状腺外科
資格 日本外科学会認定外科専門医
専門・研究分野 原発性肺癌、間質性肺炎、縦隔腫瘍、気胸
その他呼吸器疾患全般

医員(非常勤

臼田うすだ   実男じつお
出身医局 日本医科大学 呼吸器外科
資格 日本外科学会専門医・指導医
日本呼吸器外科学会専門医・評議員
日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医・評議員
日本レーザー医学会専門医・指導医・理事
日本臨床細学会細胞診専門医・評議員
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医・暫定教育医
国際光線力学学会(理事)
医学博士
専門・研究分野 呼吸器外科学
胸腔鏡下手術
レーザー内視鏡治療

教育活動・学会活動・研究業績

    施設認定

  • 日本外科学会 外科専門研修プログラム専門研修連携施設
  • 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医制度専門研修連携施設
  • 所属学会

  • 日本外科学会、日本胸部外科学会、日本呼吸器外科学会、日本肺癌学会、日本呼吸器内視鏡学会 等

外来診療スケジュール表

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午前     牧野 洋二郎 山道 尭
(呼吸器科)
  初診・再診
(2・4週)
      臼田 実男    
午後     牧野 洋二郎 山道 尭