乳腺外科Breast surgery

乳腺外科(検査、手術について)

乳腺の検査について

  1. 穿刺(せんし)吸引細胞診

    エコーで乳房内の病変を確認しながら、採血で用いる針を使って細胞を採取し顕微鏡で調べる検査です。短時間で簡単にでき、良性の確認などに行います。

  2. 針生検

    エコーで乳房内の病変を確認しながら、局所麻酔後3mm大の針で病変の一部を採取し顕微鏡で調べる検査です。病変の診断などに行います。

  3. 吸引式針生検(マンモトーム生検)

    針生検の一種です。乳房内の病変の一部を採取し顕微鏡で調べる検査です。マンモグラフィを撮影しながら行うステレオガイド下マンモトーム生検とエコーを用いて行うエコーガイド下マンモトーム生検があります。
    ステレオガイド下マンモトーム生検は主に石灰化病変に対して行います。

乳がん手術について

乳がんの手術は、①乳房をどうするか ②脇の下のリンパ節をどうするかの組み合わせです。

①乳房をどうするか

大きく分けてA.乳房切除術とB.乳房部分切除術の2つがあります。以下にそれぞれの術式について説明いたします。

A.乳房切除術

乳頭乳輪を含めて乳房全体をとる手術です。通常筋肉は切除しません。乳房を温存する適応のない方、再手術が困難な方、部分切除では変形が大きいと予想される方、乳房再建術を希望される方などが対象になります。通常手術創は横一本の線になります。適応がある方は、同時再建も可能です。
術後の放射線治療は原則必要ありませんが、術後病理診断結果によっては胸壁照射が追加になることもあります。術後の局所再発率は約1%程度といわれています。

B.乳房部分切除術

乳房温存術とも呼ばれます。ご自身の乳房を残すことができます。
術前の画像診断などで予想されるがんの範囲から1~2cmほど余裕をもって部分的に切除します。このため、多少の変形やひきつれができます。適応となる条件は、ガイドラインに準じ、しこりの大きさが約3cm以下、広範囲ながんの進展(広がり)がない、多発病変ではない、術後に放射線治療が可能である、整容性が保たれる、乳房を温存する希望があるなどです。しこりの大きさや部位により変形が大きいことが予想される場合、乳房切除術をおすすめすることもあります。
術後の病理組織検査(顕微鏡の検査)で、切除した乳房検体の断端(切り口)を確認し、がんが残ってないかどうかを確認します。がんが残っていて局所再発の可能性が高いときは、追加切除術もしくは乳房切除術が必要になります。
術後は残った乳房に放射線治療を行います。外来通院で約5~6週間ほどかかります。乳房を温存した場合、放射線治療を行うことで局所再発率を下げることができますが、それでも局所再発(残した乳房内にがんが再発する)率は年1%程度、5年間で5%程度の確率になります。遠隔転移、生存率では乳房切除術、乳房部分切除術に差はありません。

②わきの下(腋窩リンパ節)をどうするか

がんの手術ではリンパ節転移があるかどうかで病気や術後の治療法が異なり、顕微鏡で転移の有無を確認する必要があります。方法として、A.センチネルリンパ節生検とB.腋窩リンパ節郭清があります。

A.センチネルリンパ節生検

術前の診断で腋窩リンパ節に転移がないことが予想される方が適応になります。がん細胞がリンパの流れに乗って一番最初にたどり着くリンパ節をセンチネルリンパ節と呼んでいます。術前に乳房内に放射線同位元素を注射し、術中にセンチネルリンパ節を見つけて顕微鏡で転移の有無を調べます。転移がない、もしくは2mm以下の微小転移であった場合は、それ以上先に転移がないと予想し郭清を省略します。2mm以上の転移があった場合は、リンパ節の転移状況を確認するために腋窩リンパ節郭清を追加します。
この方法を行うことで、リンパ節郭清に伴うむくみやしびれなどの合併症を減らすことができます。5%くらいの確率で術前、術後の病理診断結果が異なることがありますが、その後の治療成績に大きな差はありません。

B.腋窩リンパ節郭清(かくせい)

術前や術中にリンパ節転移が確認されている方が適応になります。わきの下の脂肪組織とリンパ節をひとまとめにして取り除く方法です。リンパ節転移の有無と転移の個数を把握することで術後の治療法の決定に役立てます。また転移しているリンパ節は取り除かれるため、局所治療にもなります。
リンパ節郭清を行うと、拘縮(動きの制限)が起きやすくなりますので、リハビリが必要になります。また、リンパ浮腫(うでのむくみ)が起こりやすくなります。神経を一部切断するため感覚障害や慢性疼痛の原因となることがあります。

③乳房再建術

乳房再建をお考えの方へ

術式は、病変の広がりを踏まえて決定するのはもちろんですが、ご自身がどうしたいのか、何を大切にしたいのか、など様々な検討の上決めています。
主治医と十分に話し合いましょう。