教室・講演会等のご案内

第6回 糖尿病の薬【内服薬】(薬剤師 宮﨑 達徳)

糖尿病治療は、食事療法・運動療法・薬物療法の3本柱により成り立ちます。
お薬を使って血糖値を下げるだけでなく、食事療法・運動療法も継続し、血糖値の上がりにくい体質を維持することが大切です。
薬は、食事療法・運動療法のサポート役です。

血糖値が下がるしくみ

糖尿病では、「インスリンが十分に出ない」(インスリン分泌不足)や「インスリンが十分に効かない」(インスリン抵抗性)ことによって、血糖値が高くなります。
2型糖尿病ではインスリン分泌不足と抵抗性の2つの要因で血糖値が高くなります。

    
    

内服薬の種類

1.インスリン分泌促進系

① スルホニル尿素薬(SU薬)

薬品名 グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、アマリール、オイグルコン、グリミクロンなど
特徴・注意点など 主にインスリン分泌を促進し、食後と空腹時の血糖値を下げます。その時の血糖値に関係なく効くため、低血糖には特に注意が必要です。
過食傾向になりやすいため、食事療法を確実に実行することが大切です。

② 速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

薬品名 レパグリニド、ミチグリニド、ナテグリニド、シュアポスト、グルファスト、ファスティックなど
特徴・注意点など SU薬より速く短く効き、食後の血糖値を下げます。そのため、食直前に服用する必要があります。単独の使用でも低血糖のリスクがあるため注意してください。

③ DPP-4阻害薬

薬品名 シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、ジャヌビア、エクア、ネシーナ、トラゼンタなど
特徴・注意点など 1日を通して効きますが、血糖値の高いときを中心に効きます。そのため、単独での使用では低血糖は起こしにくいお薬です。また、体重増加も起こしにくいお薬です。最近では、週1回服用するお薬もあります。

④ GLP-1受容体作動薬

薬品名 リベルサス
特徴・注意点など 血糖値が高いといきを中心に、1日を通して効きます。そのため、単独での使用では低血糖は起こしにくいお薬です。また、食欲を抑制することで、体重減少効果も期待できます。開始時に下痢・便秘・嘔気、食欲不振などの副作用が出ることがあるため、少量より開始します。
    

2.インスリン抵抗性改善系

① ビグアナイド薬

薬品名 メトホルミン、メトグルコなど
特徴・注意点など 肝臓で糖が作られるのを抑えたり、インスリンの効きを良くします。だるさ・筋肉痛や・嘔吐・下痢などの副作用が現れることがあります。重大な副作用を起こさないように、ヨード系の造影剤使用検査や、手術の2日前から内服を中止し、検査や手術後も服用再開は2日後からとなっています。単独での使用では低血糖を起こしにくいお薬です。

② チアゾリジン薬

薬品名 ピオグリタゾン、アクトス
特徴・注意点など インスリンの効きを良くします。むくみの出ることがあります(特に女性)。また、過食傾向になりやすいため、食事療法を確実に実行することが大切です。単独での使用では低血糖を起こしにくいお薬です。
    

3.糖の吸収・排泄調製系

① α-グルコシダーゼ阻害薬

薬品名 ボグリボース、ミグリトール、ベイスン、セイブルなど
特徴・注意点など 糖の吸収を穏やかにします。そのため、食直前に服用します。単独での使用では低血糖を起こしにくいお薬です。多剤併用にて低血糖症状が出現した場合には、必ずブドウ糖を摂取する。服用開始時に、腹部膨満感、放屁などの消化器症状が増えることがあります。

② SGLT2阻害薬

薬品名 フォシーガ、ジャディアンス、カナグル、スーグラなど
特徴・注意点など 糖を尿中に排泄させ、血糖値を下げます。インスリン分泌に依存しない作用機序のため、単独の使用では低血糖を起こしにくいお薬です。
血圧低下、脂質改善、体重減少効果が期待出来ます。尿の量が増えるため、水分をこまめに摂取して脱水の予防を心掛けましょう。また、尿路・性器感染症に注意してください。発疹が現れることがあります(特に開始後2週間)。最近では、一部の薬が心不全、腎不全にも適応が拡大されました。
    

4.新薬

薬品名 ツイミーグ(グリミン薬)
特徴・注意点など 血糖値を下げる作用とインスリンの効きを良くする作用があります。
血糖値を下げる作用は、血糖値の高いときを中心に効きます。そのため、単独での使用では低血糖は起こしにくいお薬です。
悪心、下痢、便秘などの消化器症状が発現する場合があります。ビグアナイド薬との併用の場合、他剤と比べて消化器症状が出やすくなるため注意が必要です。